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毎日新聞「ひと」
毎日新聞 (00.11.04)

 文字を電話で人に説明するやり方で引く、ユニークな辞典「読めそうで読めない漢字辞典」(サンルイ・ワードバンク)を出版した。画数をいちいち数えなくても、部首や読み方が分からなくてもすぐ引ける辞典だ。

 「国語はまったくだめ。漢字の素人だからこそ、考えついたのかも」

 現在使われている漢字辞典は約280年前、中国清朝の康煕帝が編纂させた「康煕字典」がルーツ。画数や部首の引き方は、康煕字典以来、受け継がれていた。

 1983年、埼玉県大宮市に皮膚科医院を開業し、患者の住所録をつくろうと、ワープロを打ち始めた。しかし、読めない名前や同じ読みを持つために変換に手間取る漢字があまりにも多かった。

例えば江戸時代の大老、井伊直弼の「弼」。「ひつ」「すけ」などの読みがわからなかった。そこで漢字を分解し「ゆみ・ひゃく・ゆみ」の一の1字から「ゆひゆ」と打つと、「弼」が出るようワープロに登録した。このとき、「漢和辞典に応用できるのでは」とひらめいた。

 紙1枚に1字ずつ漢字を書き、見出し語をつける作業の繰り返し。読めない「へん」や「つくり」につまずき、放り出しかけたこともあったが、その場合は「ん」をあてる「ウルトラC」を思いついた。完成した辞書は一見、暗号集のようだ。こつこつ18年も続けたのは、「発見した人が最後までやる義務があると思ったから」と話す。

 常用漢字以外は目にする機会が少ないことを憂える。「この辞典で漢字文化に少しでも触れてもらえたら」



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